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[ICT] グローバル競争のパラダイムにおける韓国のAI産業および政策動向
作成日
2025.02.19

韓国のAI産業の現状

人工知能(AI)は、日常生活からビジネス環境に至るまで、不可欠な技術として位置づけられている。高い自律性を基盤とするAI技術は複雑な問題を解決し、日常を単純化しており、引いては社会、科学、医療、食糧問題の解決など人類が直面している主な課題の解決においても積極的に活用されるものと期待されている。現在、AIは国の発展の原動力になっており、AI技術の覇権競争は企業を超えて国家間の競争に激化している。韓国は世界6位水準のAI競争力(Tortoise Intelligence, The Global AI Index, 2023)を有しており、インフラ(Infrastructure)、開発(Development)、政府政策(Government Strategy)、規模(Scale)指数において高く評価されている。

2025年、韓国のAI市場の規模は前年比で12.1%成長した3兆4,385億ウォンに上るものと推計されており、年平均成長率は14.3%で2027年には4兆4,636ウォン規模に上る見通しだ(IDC Semiannual Artificial Intelligence Tracker, 2023)。特にAI応用産業分野は情報通信、製造、医療、公共/国防、金融、教育などの主な産業群において目立っており、企業競争力の向上および新規ビジネスチャンスの創出に向けた持続的な投資の拡大が予想される。

韓国のAI技術の現状

韓国のAI関連技術は2018年81.6%から2022年88.9%に上昇しており、韓国は主要国の中で5年間、技術水準が最も大きく発展した国である(ICT技術水準調査および技術競争力分析報告書、情報通信企画評価院、2023)。全般的な技術水準において世界最高の技術を保有した米国(100%)に比べて2018年81.6%から2022年88.9%へと7.3%p上昇しており、特に応用段階AI技術水準の発展速度は主要国に比べ、2倍以上速いことがわかった。また、米国との各分野におけるAI技術の格差は、学習知能分野で1.3年(2018年比で0.7年縮小)、単一知能分野で1.5年(2018年比で0.5年縮小)、複合知能分野で1.0年(2018年比で1.0年縮小)で、技術格差の面において最も大きな変化を示した国である。

韓国の企業が最も多く保有している第1順位のAI技術分野は、視覚知能(30.1%)が最も多く、次に推論・知識表現(25.1%)、言語知能(12.8%)の順となっている。多様な分野でAI基盤のイメージ認識と自然言語処理技術を通じて業務の自動化や効率化に大きく貢献している。AIの論理的思考と推論能力の向上、インフラおよびデータ処理能力の高度化を通じて、より広範囲な産業で革新を加速させるものと見られる。

AI産業の展望及び政府の育成政策

2024年12月、「人工知能の発展と信頼基盤造成等に関する基本法」(以下、「AI基本法」)が国会の本会議で可決された。これで韓国は欧州連合(EU)に次ぎ、世界で二番目にAI基本法を制定した国となった。AI基本法はAI技術および産業振興に向けた政府支援のガバナンス体系を構築し、責任あるAI生態系の造成を通じてグローバルAI競争力の確保の枠組みを作ったことから肯定的に評価されている。しかし、法案の規制内容と賦課義務が曖昧であるため、ビジネス環境の不確実性が高くなりうるという懸念が提起されている。本テーマではEUのAI法との違いとそこから生まれる懸念事項や今後の展望について述べたい。

AI基本法とEUのAI法(AI Act)はリスク基盤のアプローチ方法を取っており、潜在的なリスクを事前に予防するという点で共通している。しかし、AI基本法は規制対象、範囲、制裁の厳格性において違いがある。第一に、AI基本法はリスクに応じて「許容できないリスク(Unacceptable Risk)」、「高リスク(High Risk)」、「限定的リスク(Limmited Risk)、「最小リスク(Minimal Risk)」の四つに分けているEUのAI法とは違って、AIが及ぼす「影響」に焦点を当て「高影響人工知能(人の生命、身体の安全および基本権に重大な影響を及ぼすか危険をもたらす懸念がある人工知能システム)」と生成人工知能(入力データの構造と特性を模倣して文、音、絵、映像の外に多様な結果物を生成する人工知能システム)の二つに分けている。規制対象事業者を、「人工知能開発事業者(人工知能を開発して提供する者)」と人工知能利用事業者(人工知能を利用して製品またはサービスを提供する者)」を合わせて「人工知能事業者」と定義し、共通の義務を課す。これは高リスク人工知能の供給者(Provider)、利用者(Deployer)、輸入者(Importer), 流通事業者(Distributer)を区分してそれぞれ異なる義務を課すEUのAI法とは違いがある。

第二に、「国防または国の安全保障の目的で開発・利用される人工知能」に対してのみ例外規定を設けるなど、国防・安全保障、発売前の研究・試験・開発、科学的な研究・開発、純粋に私的な非専門的活動など、いくつかの例外規定を設けているEUのAI基本法に比べて例外範囲が狭い。

第三に、企業および技術、サービススケールを考慮せず、最大3,000万ウォンの過怠料の規定のみを設けており、EUのAI基本法の世界売上高の最高7%、または3,500万ユーロの課徴金と企業の規模に応じて科す制裁の厳格性という面で違いがある。

まとめるとEUのAI法に比べて、AI基本法において代表的に指摘されて事項は「規制内容のと対象の曖昧さ」、「協議の例外規定」、「積極的な制裁のための厳格性と差等適用基準の無さ」などであり、このような不確実性によって来される副作用の問題が提起されている。ところがAI基本法は政府レベルのAI技術および産業振興に向けた政策確立の根拠を作ったことに意義がある。AI基本法の規制対象および範囲、義務履行のための基準および手続などは下位法令で制定され、リスク管理、高影響人工知能の安全性・信頼性の確保、利用者保護などに関する内容はガイドライン・告示を通じて具体化される予定だ。2026年1月の施行を控え、科学技術情報通信部は産業界、学界、法曹界の専門家からなる官民合同協議体(下位法令整備団)を発足し、今年6月を目途に下位法令の草案を作る予定だ。政府および関係機関の迅速な推進を通じてAI基本法の不確実性を解消し、企業の予測可能性を高めることで官民による大規模な投資が促進されることを期待する。

キム・テヒョン本部長(thkim@aiia.or.kr)
韓国人工知能産業協会

<本稿の内容は、筆者の個人的見解であり、必ずしもKOTRAの見解ではありません。>

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