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[観光・レジャー] [韓国の観光産業-回復から再飛躍へ]激しい競争と急変する環境の中で持続可能な成長戦略が必要な時期
作成日
2025.07.07

韓国の観光産業の現状

コロナ禍前の水準を回復した韓国の観光産業はデジタル基盤の構造変化が進んでいる

韓国の観光産業は新型コロナのパンデミックにより深刻な打撃を受けたが、2022年以降素早い回復ぶりを見せ、新しい転換の局面に入っている。2024年末基準で国際観光客数は2019年に比べ約88%の水準にまで持ち直し、国際観光収入もパンデミック前の97%の水準を示した(UN Tourism、2025)。韓国を訪問した外来観光客数は約1,637万人でこれはパンデミック前に比べて94%の水準であり、前年比48%増加した数値である(観光知識情報システム)。また、2024年基準で韓国人の国内旅行経験率と出国客数は2019年の数値に近づいたか上回る水準となっている。
図1. 韓国の国民国内旅行経験率、国民海外旅行客数、訪韓外来客数の推移
우리나라의 국민 국내 여행경험률, 국민 해외여행객 수, 방한 외래객 수 추이
* 出所 : 文化体育観光部(2020-2024)。各年度国民旅行調査; 文化体育観光部(2025.03.31.)。2024国民旅行調査第4四半期の結果(暫定値):観光知識情報システム(https://know.tour.go.kr/)
韓国の観光産業を観光事業体を中心に見ると次の通りである。観光振興法に基づいて登録された観光事業体数(2023年基準)は前年比10.6%増えた38,712社で、そのうち半分が旅行業に該当する。観光事業体全体の約45%が首都圏に位置している(文化体育観光部、2024)。
2023年の観光産業全体の売上は24.4兆ウォンで前年比40.5%増加し、これはコロナ禍前の2019年水準の約90.9%に該当する(文化体育観光部、2024)。これはパンデミック期間中に急減していた観光需要が本格的に回復の局面に入っていることを意味する。観光産業の業種別売上高(2023年基準)を見ると、観光宿泊業が約10.6兆ウォンで最も高い割合を占めており、次に旅行業3.9兆ウォン、カジノ業2.7兆ウォンの順となっている(文化体育観光部、2024)。年度別の売上高の推移を見ると、2023年の売上高が回復していない業種は旅行業、カジノ業、国際会議業となっている。つまり、韓国の観光事業体は首都圏に集中されており、観光産業の売上は宿泊業を中心にコロナ禍前の水準を回復する流れとなっている。
表1. 観光事業体の売上高の推移(2019年-2023年)
(単位:兆ウォン、%)
관광사업체 매출액 추이
区分 2019 2020 2021 2022 2023 ’19年比
’23年増減率
前年比
’23年増減率
全体 26.8 8.2 10.5 17.4 24.4 -9.1 40.5
旅行業 8.6 0.4 0.4 1.4 3.9 -54.6 188.4
観光宿泊業 8.4 4.0 5.6 8.8 10.6 26.2 20.2
観光客利用施設業 1.1 0.7 0.8 1.2 1.4 29.0 16.3
国際会議業 1.5 0.4 0.6 0.9 1.4 -6.7 59.8
カジノ業 2.9 1.0 1.2 1.9 2.7 -6.9 40.7
遊園施設業 2.1 0.6 0.6 1.6 2.2 3.2 39.5
観光便宜施設業 2.1 1.2 1.3 1.6 2.2 0.3 33.8
* 資料:文化体育観光部(2020-2024). 観光産業調査(2019-2023年基準)
観光需要の側面から見ると韓国をはじめとする世界の観光需要は過去の団体旅行中心から個人旅行中心に変化しており、体験型、地域観光などにシフトしている。また、デジタル技術の発展でオンライン旅行会社(OTA、Online Travel Agency)が成長しており、人工知能(AI)技術、ソーシャルメディア、メディアアートなどの活用も素早く広まっている。特に観光商品の検索、予約、決済、評価などがオンラインで行われており、ブッキングホールディングス(Booking Holdings, Inc)、エクスぺディア(Expedia Group)、エアビーアンドビー(Airbnb)、トリップドットコム(Trip.com Group)のようなOTAのグローバル観光市場に対する支配力が強化されている(アン・ヒジャ、ハン・ヒジョン、2024)。韓国の観光産業においてもグローバルOTAが国内市場に参入して以来、ヤノルジャ、ヨギオテなどの韓国OTA企業の成長が目立っている。 

市場展望と政府の観光産業育成政策

グローバル競争力の強化と持続可能な成長が観光産業政策の鍵

2025年の国際観光客数は2024年に比べ3∼5%成長することが予想され(UN Tourism、2025)、全般的な観光需要が回復傾向にあることを示唆する。しかし、物価高の傾向、宿泊及び輸送費用の上昇、気候変動の深刻化、観光労働力の不足などの要因は依然として観光需要の回復における制約要因として働く可能性が高い。
観光産業は人工知能をはじめとする新技術の活用、持続可能な観光に対する需要増、新規観光地に対する関心の拡大、価値消費中心の消費トレンドの拡散といった変化を経験しており(UN Tourism、2025)、このような変化に合わせた観光商品やサービス、関連企業の成長が見込まれる。また、グローバルOTAの影響力は持続的に強くなることが予想される。彼らはプラットフォームを通じて確保した膨大なユーザー基盤やデータ、資本力、高度化された個人化サービス、グローバルネットワークなどに基づいて観光流通チャンネル内での優位を固めている(アン・ヒジャ、ハン・ヒジョン、2024)。このようなプラットフォーム中心の再編は国家間、企業間の競争をより激化させている。それにオンラインコマース、金融、交通などの非観光産業企業も観光市場に積極的に参入しており、産業間の境界も徐々にあいまいになっている。
観光産業は宿泊、交通、ツアー、アクティビティなどの多様な供給者との有機的な連結を通じて作動し、観光客の消費は地域経済の活性化や雇用創出にも直結する。よって観光は国や 地域経済に重要な役割をする中核産業として認識されている(アン・ヒジャ、ハン・ヒジョン、2024)。
このような変化に備えて韓国政府はK-コンテンツ(音楽、食べ物、文化など)と連携した体験型観光の育成、人工知能及びビッグデータ基盤のスマート観光の拡大、ウェルネスやグルメなどの高付加価値観光コンテンツの高度化を主要政策方向に設定している。それとともに政府は外国人観光客の誘致拡大、観光ベンチャー及び地域観光企業の成長支援、観光インフラのデジタルトランスフォーメーションと高度化など総合的な政策手段を通じて観光産業の持続可能性とグローバル競争力を高めるために努力している。

海外企業の韓国進出の事例

外国企業の韓国観光市場への参入は統合型リゾート、グローバルホテル、テーマパークなど、様々な分野で行われている。代表的な例には香港の藍鼎グループの「済州神話ワールド」、米国モヒガングループの「仁川インスパイアリゾート」、英国「マリーンエンターテイメンツ」の「レゴランド」があり、これらの企業は大規模な投資とともに観光インフラを造成し、地域経済に肯定的な効果をもたらしている。
直接参入以外にもマリオット、ヒルトン、アコーなどのグローバルホテルチェーンは国内の主要都市で、ブランドを活用したフランチャイズまたは運営委託方式で持続的に事業を拡大しつつある。最近、韓国の観光企業はグローバル航空会社、ICT企業などとのコラボレーションを通じて海外進出を拡大しており、K-観光スタートアップのグローバル連結性も強化されている傾向にある(毎日経済、2023.10.17.)。
一方、一部の外国人投資プロジェクトは事業性不足、許認可遅延などの問題で成り立たなくなる事例も発生しており、制度的な補完や安定的な投資環境の造成が持続的に求められている。

韓熙貞(ハン・ヒジョン)(hjhan@kcti.re.kr)
韓国文化観光研究院 観光産業研究室副研究委員

<本稿の内容は、筆者の個人的見解であり、必ずしもKOTRAの見解ではありません。>

参考文献

キム・ヒョンジュ、ユン・ジュ、イ・ソンビン(2024)、地方時代、訪韓外来観光客地方観光活性化方策。韓国文化観光研究院。
毎日経済(2023.10.11.)。500社海外投資誘致「進撃のK観光ベンチャー」https://www.mk.co.kr/news/culture/10847610
文化体育観光部(2020-2024)。各年度国民旅行調査
文化体育観光部(2020-2024)。2019-2023年基準観光産業調査
文化体育観光部(2025.03.31.)。2024国民旅行調査第4四半期結果(暫定値)
アン・ヒジャ、ハン・ヒジョン(2024)。 最近OTA(オンライン旅行会社)市場動向分析及び政策課題。韓国文化観光研究院
UN Tourism(2025). World Tourism Barometer, 23(1).
観光知識情報システム(https://know.tour.go.kr/)
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