2023年には世界半導体市場の不況の影響で上半期には韓国の半導体輸出も非常に厳しい状況だった。しかし、サムスン電子とSKハイニックスが減産を決めて供給を減らしたことで半導体メモリの単価が安定し、下半期から輸出が回復した。このような基調が続き、今年1月から韓国の半導体輸出は毎月100億ドル規模を維持し、8月までの累積輸出額は888億ドルとなっている。これは史上最高記録の2020年の910億ドルに近い数値で、年間輸出額が最高値を更新する可能性も非常に高い。現在の輸出実績だけを見ると韓国の半導体景気は好況期に入っていると言える。
図1. 最近の韓国の半導体輸出の推移
* 資料:韓国貿易協会(2024)
世界半導体需要市場の発展と韓国の半導体産業
半導体が開発されて以来、世界の半導体市場はやや浮き沈みはあったものの、引き続き成長傾向を維持している。これは半導体が使われる機器の種類が増え、使われる半導体の容量も増えているためである。中でも爆発的に半導体需要が増えたきっかけは1980年代にパソコン、2000年代後半にスマートフォン、そして2010年代半ばにデータセンター用サーバの拡大が代表的である。最近は半導体市場を牽引するAIがそのバトンを引き継いだ。AI技術そのものは新しい概念ではないが、昨年末から注目されている生成AIのおかげでそのシステムに必要な半導体需要が増えているからだ。
半導体需要を牽引するパソコン、スマートフォン、サーバを稼働し、AIを実現するためには非メモリ(システム半導体)だけでなくメモリ(半導体メモリ)も重要な機能をする部品として使われている。従って世界半導体メモリ市場の61.0%(OMDIA 2024)を占めている韓国は世界半導体市場で非常に重要な役割をしていると言える。特に最近需要が急増しているHBM(High Bandwidth Memory(広帯域メモリ))は韓国企業が世界需要の90%(TrendForce 2024)以上を供給しているため、今後も世界半導体市場において韓国の影響力が簡単に下がることはないと思われる。自他ともに認めるように韓国は世界半導体メモリの主要供給国であり、世界市場で需要が増えれば輸出を引き続き増えるものと見られる。
世界最大の半導体メガクラスターの造成
ところが新型コロナウイルスによるパンデミック以降、グローバルな半導体供給不足現象を経験した主要国が最近推進している政策は、韓国の半導体産業を脅かす要因となっている。現在のグローバル半導体のサプライチェーンは、半導体生産工程で経済性と効率性を追求するために各国のコアコンピタンスを十分活用できるように長い時間をかけて構築された。しかし、今や経済性と効率性よりはサプライチェーンの安定と経済安全保障を追求し、海外依存度を下げるために自国内に半導体生産工場を積極的に誘致しており、従来のサプライチェーンは再編されている。このような動きが加速化すると韓国が優位を占めている半導体メモリ市場でも激しい競争が繰り広げられる恐れがある。
このような外部環境の変化に対応するために韓国政府は2024年1月、民生討論会で「世界最大・最高の半導体メガクラスター」造成方策を発表した。半導体メガクラスターは京畿道南部の半導体企業や関連機関が密集している地域一帯を意味する。メガクラスターは2,102万㎡の面積で‘30年基準で月770万枚のウェハー生産を予想するなど世界最大規模を目指している。世界半導体市場での主導権を確保するためには技術だけでなく規模の経済も必要であるためだ。韓国政府は今年5月に「半導体生態系総合支援方策」を発表した。ここには半導体産業の競争力を強化するために、半導体生態系全般に対して26兆ウォン規模の追加の半導体総合(多様な税制・金融・財政)支援方策を推進するという内容が盛り込まれた。
韓国に集まるグローバル半導体素材・部品・装置企業
韓国政府の半導体メガクラスター造成と生態系強化支援が拡大されたことを受け、グローバル素材・部品・装備企業の韓国進出も増えている。グローバル半導体装備企業のラムリサーチは昨年末、京畿道龍仁にある半導体研究開発(R&D)施設を拡大するという計画を発表しており、オランダの装備会社ASMLは今年初めに、韓国に次世代極端紫外線(EUV)露光装置と関連した研究開発(R&D)施設を建設するために京畿道華城地域の敷地を買い取った。日本の半導体装備のトップ企業である東京エレクトロン(TEL)は2026年の稼働を目指して京畿道龍仁に4番目の研究開発(R&D)センターを建てている。このようなグローバル半導体製造装備企業の韓国進出の拡大は韓国の半導体産業生態系の強化や競争力の維持に役立つと期待されている。
図2. 最近の国別半導体製造装備市場の規模
* 資料:SEMI (2024)
<本稿の内容は、筆者の個人的見解であり、必ずしもKOTRAの見解ではありません。>